薬の効きにくい微生物
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ感染症は、長引くとひと月ほど治癒までかかる。
しかし、9割は放っておいても自然治癒する。
この間は、極力抗生物質は使いたくないところ。
マイコプラズマを倒すことができるのは、ごく限られた抗生物質のみ。
切り札は、温存しておくのがベスト。
1カ月ほどしても、寛解しなければ肺炎移行を疑う必要がある。
聴診で肺炎を疑う所見を得れたなら、胸部レントゲン撮影。
これで肺に白い炎症像が確認されたら、マイコプラズマ肺炎の治療となる。
治療
限られる抗生物質
治療は、抗生物質による化学療法。
とはいえ、マイコプラズマは特殊な微生物。
他の細菌のように細胞壁をもたない。
それゆえ、細胞壁合成阻害による抗菌力をもつ、抗生剤の主力であるβラクタム環系は無効。
よって、効果のある抗生物質は、マクロライド系・テトラサイクリン系・ニューキノロン系に限られる。
ファーストチョイスは、マクロライド系の抗生物質。
クラリスロマイシンの製剤、クラリスあたりが有名。
耐性菌と副作用
ところが、現在マクロライド系耐性のマイコプラズマがものすごい勢いで増えているのだ。
通常、マクロライドを投与すると、2~3日で解熱し、効果が判定できる。
ところが耐性を獲得したマイコプラズマは、マクロライドでは効果がでない。
そうなると選択肢はテトラサイクリン系、もしくはニューキノロン系のどちらかになる。
大人であれば、セカンドラインはテトラサイクリン系のミノサイクリンあたりとなる。
それでもだめなら、ニューキノロン系が選択される。
重症の肺炎では、ステロイドの投与もおこなわれる。
問題は小児だ。
そもそもマイコプラズマ感染症は小児に多い疾患。
ところが、テトラサイクリン系、ニューキノロン系は小児の副作用が多い。
テトラサイクリン系は、歯牙への色素沈着・一過性骨発育不全・エナメル質形成不全などの副作用を有するため、8歳以下には原則投与禁止。
ニューキノロン系は関節や腱、軟骨の軟部組織に障害をおこすため、15歳以下への投与は禁忌となっている。
つまり、マクロライド系が効かないとなると、お手上げであった。
幼少期のテトラサイクリン系薬剤服用による重度の着色歯
しかし、2017年に小児用のニューキノロン製剤、トスフロキサシンがマイコプラズマ肺炎に対して適応菌種として認められ、ようやく耐性マイコプラズマ肺炎への治療手段が確立された。