間接部分修復 その2

前回は部分修復の種類と適用を説明した。
インレーはその材質によって、大きく性質が異なる。
今回はその材質による違いを説明していく。

審美的な特徴

インレーは、上顎と下顎で目立つところが変わる。
上顎では側面が、下顎では咬合面が目立つ。

 

上顎のインレー:側面が目立つ

上顎のインレー

下顎のインレー:咬合面が目立つ

下顎のインレー

保険外の材料

保険外の材料は、保険が効かないため高額。
しかしながら、保険の代用合金ではなく、正しい歯科材料である。
その場しのぎでなく、長期にわたって安全な治療が可能。
本気で治療するならこちらを選んでおきたい。

セラミックインレー(E-MaxPress)

価格 50000円(税別)

当院ではガラスセラミックを採用している。
射出成形で作成されるため、極めて高精度。
歯とほぼ同じ硬さを持つため、向かい合う歯を傷つけることなく、歯質と一緒にすり減ってくれる。

生体親和性は極めて高く、金属アレルギーの原因とならない。
また、樹脂系や保険金属の材料に比べて、歯垢が付着しにくい。
極めて高い衝撃で、割れることがある。

見た目は極めて歯に近く、透明感を備える。
セラミックゆえ、変色しない。

長く健康に、美しく治療できる逸品である。

セラミックインレー
セラミックインレー

セラミックの部位
セラミックの該当部

ハイブリッドインレー

価格 30000円(税別)

セラミックのフィラー(粉)を少量のプラスチックを加え、固めたもの。
セラミックほどではないが、自然な色合いを実現できる。
金属アレルギーの原因とならない。
強い衝撃で割れる場合がある。
長年の使用で多少の変色がみられる場合がある。

ハイブリッドインレー
ハイブリッドインレー
ハイブリッドインレーの該当部
ハイブリッドインレーの該当部位

ゴールドインレー

価格 40000円(税別)

高カラット金合金で作成されたインレー。
審美性に劣るが、口の中が明るい印象がある
天然歯に近いやわらかさと、高い適合精度のため、かみ合う相手の歯に優しく、再び虫歯になりにくい。
延展性(延びること)を利用することで、完璧な辺縁封鎖をおこなえる。
銀歯に比べ、金属アレルギーになりにくい
歯医者の口腔内には、ゴールドインレーによる治療が多い。

ゴールドインレー
ゴールドインレー

保険の材料

金銀パラジウム合金

いわゆる銀歯として、保険治療で使用される金銀パラジウム合金は、日本のみで使用されている代用合金。
銀・パラジウム・銅・金・亜鉛などを合わせた合金。
アレルギーのリスクが高い。
一部の先進国では使用が禁止さえされている。

審美的に劣り、経年劣化で歯質や歯ぐきを変色させる。
硬すぎるため、かみ合う相手の歯を傷つける。
酸化被膜が形成され、歯垢を寄せ付けやすい。

加工精度に劣り、隙間から虫歯になりやすい。
長期的な予後は悪いが、とりあえず当面の日常生活には支障はない。
歯科医師の目から見れば、仮設住宅のようなもの。
一生使い続けるには、全く力不足。

小児の乳歯には、銀合金が用いられる。
柔らかいため、永久歯には不向き。
酸化して黒変する。

金銀パラジウム合金(銀歯)
保険の銀歯

結局、どれを選べばよいのか

どの材料を選べばよいかについては、個人の価値観によるところが大きい。
金属アレルギーなどがあれば、否応なくセラミック系の材料を選ばざるを得ないが。
あとは、見た目と耐久性の問題。

高額だが、きちんとした材料で、再び虫歯になりにくい治療をして、歯を守るのも一つ。
安価で、保険材料で、再び虫歯になったらまたなおすのも一つの考え方。
ただし、治療は重ねるごとに歯は小さく、インレー → アンレー → クラウン と銀歯は大きくなり、最後は歯が無くなる。

日本では保険制度で安く治療が受けられるため、虫歯になったら治せば良いという風潮が強い。
そのため、結果的には歯を喪失するところまで行きついてしまうケースが非常に多い。
海外では歯科治療費が非常に高い、そのため小さな虫歯の段階で本気の治療をして、再び虫歯にならないようにする。
小さなダメージをきちんと治療して、絶対にそれ以上はすすませないようにするのが主流。

参考までに、私が身内におこなう治療を紹介する。
下顎臼歯部:セラミックインレー
上顎臼歯部:ゴールドインレー
この組み合わせが、最も審美的、耐久性に満足できる性能を発揮する。

間接部分修復においては、よくよく考えたうえで治療を選択していただきたい。

インレー修復 完