はしかが流行している。
たった一人の台湾からの旅行者が沖縄を訪れ、そこから日本本土にまで広がった。
10年近く前の新型インフルエンザの流行をほうふつとさせる感染拡大だ。
今日の時点で発症者は100人を超えている。

はしかは麻疹ウイルスによるウイルス性疾患。
麻疹ウイルスは極めて感染力が強く、インフルエンザの10倍以上。
空気感染するため、罹患者と同じ空間にいた場合、免疫を獲得していなければ高い確率で感染する。
同じ体育館に一人患者がいただけで、相当数が空気感染するという。
普通のマスクでは感染は防げない、N95グレード以上が最低でも必要。
もし感染が疑われたら、間違っても指示なく公共交通機関を利用して、他の患者のいる病院を受診してはならない。
感染を広げないことが極めて大切。

麻疹ウイルスはインフルエンザウイルス同様、一本鎖RNAウイルスではあるが、変異は遅い。
そのため、ワクチンによる予防が可能。
一度かかると二度と掛からない終生免疫と考えられてきたが、抗体価が低下した場合再感染することがある。

1977年より前に生まれた世代は、はしかのワクチン接種が任意であったため、母子健康手帳に接種歴がなければ要注意。
また1977年~1980年生まれはワクチン接種が1回のみであったため、抗体がつくられてない場合があり、やはり要注意。
現在は2回法が取り入れられている。

さて、はしかには口腔内症状がある。
発疹に先立ち、コプリック斑とよばれる1ミリほどの、白い粟粒のようなものがぽつぽつと、奥歯のそばの頬粘膜に出現する。
これが確認されたら外出を控え、まわりに感染させないようにしなくてはならない。
コプリック斑ははしかに特徴的にみられる口腔内症状で、痛みを伴う。
痛みを伴うため、飲食の障害による脱水に注意する必要がある。
殺菌作用のない、抗炎症作用のあるアズノール系のうがい薬がよいだろう。

はしかは感染してから発疹までが比較的長い経過をたどり、各時期により症状が異なる。
① 潜伏期    :感染後10~12日ほど。無症状。
② カタル期   :38度くらいの熱が3~4日続く。風邪のような症状で、この時期が感染力最強期。
③ コプリック斑期:熱はやや下がるが、コプリック斑が出現。1日~2日で消失するが、口腔内は荒れる。
④ 発疹期    :コプリック斑出現後1日ほどで、全身に赤い発疹が出現し、40度近い熱がでて3~4日続く。
④ 回復期    :発症からここに至るまでは一週間から10日ほどかかる。

はしかに効く薬はない。
基本的には対症療法をおこなう。
はしかは合併症の多い感染症、実に3割に達する。
主な合併症は中耳炎と肺炎と脳炎。
中耳炎は全体の7%。細菌性の二次感染による。
肺炎は全体の6%程度とされている。乳児では死亡例のうち過半を占める。
脳炎は1,000人当たり0.5~1人だが、25%に中枢性の後遺症が残り、致死率も15%に及ぶ。
症状が重篤化したら、医療機関に連絡をとり、その支持をあおぐこと。
はしかは決して、軽易な疾患ではない。

妊娠中の罹患は、流産や早産のリスクが数倍になる。
しかし、水痘(水ぼうそう・VZV)のように催奇形性は少ないとされているが、重篤になるリスクは高い。

はしかにかからないためには、ワクチンに勝るものはない。
生年月日に応じて、自分の接種歴を把握し、必要であればワクチンを接種すること。
とくに大人になってからのはしかは、小児より重篤化しやすい。
2週間近く社会生活を営めなくなるのは、大変なことだ。

はしかの口腔内症状 完