帯状疱疹 続き
水ぼうそうの再帰感染たる帯状疱疹。
今回はその症状のうち、最も厄介な痛みについてとりあげる。
痛み
帯状疱疹が強い痛みを伴うのは、単純ヘルペスが神経の内部をこっそり通って皮膚に達するのに対して、神経外層の神経鞘といわれる部分を通ってくるからである。
神経鞘は外層にあるゆえに、体の防衛システムに引っかかってしまう。
そのため、炎症反応が起きてしまい、リンパ球などのアタックを受けてしまう。
この炎症こそが強い痛みの原因。(炎症は体の防御機序)
ただし、免疫システムに引っかかるため、強い抗体ができ、単純ヘルペスのように再発を繰り返すことは少ない。
前駆痛
帯状疱疹の症状で、通常最も先行するのが痛みである。
発疹が出る数日前から、発症する所属神経領域に、ピリピリとした痛みや、かゆみ、知覚の異状を感じる。
この痛みを、前駆痛といい、徐々痛みは強くなってくる。
これは、帯状疱疹ウイルス(VZV)が神経に沿って、皮膚に向かって移動している時期である。
全身的には風邪のような症状やけだるさがみられることがある。
急性帯状疱疹痛
発疹が発現しだすと、痛みはいよいよピークを迎える。
痛みの箇所は、発疹と一致する。
痛みの程度は、人によって様々。
軽い痛みで済むこともあるが、焼けつくような、針を刺したような、といった強い痛みのため、睡眠すらままならないこともある。
衣擦れなどでも痛みを誘発し、痛みだすと長時間続く。
冷やすと刺激により痛みが強くなるので、できるだけ暖めるようにする。
なお、痛みの強さは、発疹のひどさとは比例しない。
発疹が数個しか出ていないのに、ひどい痛みを感じることもあれば、逆にひどい発疹でも痛みはひどくないことがある。
前駆痛・急性帯状疱疹痛は、皮膚の炎症による痛み(侵害受容性疼痛)に類する。
要は、普通の炎症性の疼痛である。
帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹罹患後、治癒したにも関わらず痛みが残る場合がある。
これは、ウイルスがいた神経が付近の炎症に伴い、リンパ球の浸潤を受けて神経がずたずたにされてしまったため。
要は、神経もろともウイルスを攻撃したためである。
このように神経そのものがボロボロになって出る痛みを、神経障害性疼痛という。
神経は非常に代謝が悪く、回復は非常に遅い組織。
それゆえ、ひどいと痛みが数年続く場合がある。
治療
発疹が出て、帯状疱疹がでたら、即、医療機関を受診し、抗ウイルス剤を投与する。
とにかく、時間が勝負となる。
目安は、発疹出現後、3日以内。
この期間内に抗ウイルス薬を服用すれば、多くは跡形もなく治る。
抗ウイルス薬と併用することがあるのが、ステロイドの全身投与。
欧米では昔から採用されている。
免疫抑制効果のあるステロイドをなぜ、ウイルス治療に使うのか。
それは、神経がリンパ球によってウイルスもろとも壊されるのを抑えるため。
ウイルスを叩くのは、抗ウイルス薬にまかせて、ステロイドで炎症を抑えて神経へのダメージを軽減するためである。
神経障害性疼痛への対処
厄介なのは神経障害性疼痛への鎮痛だ。
神経がやられて痛みが出てるので、通常の炎症を抑えるタイプの鎮痛剤は奏功しない。
つまり、神経の上流で痛みを遮断する必要がある。
薬物療法に加え、神経のブロック注射、理学療法などを組み合わせるのが主流。
使用する薬物は、抗うつ薬、オピオイド(麻薬系鎮痛剤)とアセトアミノフェンの配合薬、下降抑制系薬剤などが用いられる。
アセトアミノフェンも神経障害性疼痛の治療に用いられる
いずれにせよ、神経障害性疼痛が出てしまうと、治療は長期にわたり、長きにわたってQOL(クオリティ・オブ・ライフ/生活の質)は低下を余儀なくされる。
こうならないためにも、やはり帯状疱疹は素早い初動が求められる。
続きます