健康保険分は返ってくる

先日、患者の娘さんが海外留学から帰ってきた。
出発前に当院で全て治療を受けてから行ったので、特に問題は起きなかった。
散々、私が向こうで治療を受けると、高いぞ、と脅したからである。
歯科医療を先進国で受けると、我々の常識からは考えられない治療費を請求される。
例えば、アメリカで歯の根の治療を受けると、奥歯あたりだと30万ぐらいかかってしまう。

国民健康保険のシステム

平成13年に、健康保険の改正がおこなわれた。
海外で病気やケガで医療を受けると、その一部が払い戻されるというもの。

全てが対象になるわけではない。
治療目的の渡航(移植など)や美容整形などは対象外。
もちろんインプラントなどは対象外だ。
日本国内で保険の給付の対象になっている医療行為のみ適用される。

海外に出る前には治療を終わらせておこう
海外での治療

支給される金額

支給される金額は、日本で同じ治療を受けた場合の金額、もしくは海外での治療にかかった金額のいずれか7割(負担率3割の場合)の安い方が支払われる。

たとえば、アメリカで10万円の治療を受けても、日本では1万円の治療であれば、支払われるのは安い1万円の7割の7千円。
ミャンマーで5千円の治療を受けて、それが日本で1万の治療であれば、支払われるのは安い5千円の7割の3500円。

これを請求日の為替レートで換算して支払額が決定される。

支払いに必要なもの

保険に該当する医療を、保険の範囲内で払うために診療の内容の証明するものが必要。
具体的には、診療内容証明書、領収明細書、領収証と、それらの日本語訳。

これらに加えて、国民健康保険用国際疾病分類表から疾病を自分で探し出し、用意する書類に書き込まなくてはならない。

悪用される制度

この制度を、悪用する外国人が問題になっている。
健康保険には家族も適用になることを利用して、海外在住の家族の治療費を健康保険から支払わせるケースが後を絶たない。
悪名高き民主党政権が、外国人の健康保険の加入のハードルを、1年以上の在留から3か月以上に下げたことが原因。
我々が払い続けているいる高額の保険料を、わずかに払っただけで医療をむさぼっている。
なお、国保の赤字分は、我々の血税で補填されている。
タレントのローラの父親が、国際指名手配されたのは、この制度を悪用した詐欺。
早急に何とかしていただきたいものである。

総論

海外での歯科治療を含む医療は、先進国では非常に高くつくうえ、返ってくるのはかかった費用に対して雀の涙。
医療の安い国では、それなりの治療しか受けられない。

ただし、海外旅行における急なケガや盲腸などの急性疾患では、保険付帯のクレジットカードがあれば保険が適用される
しかし歯科分野においては、歯が折れたり、歯周病が悪化したり、入れ歯が壊れるといった緊急歯科治療でも保険の対象外
注意が必要。

結局、できるだけ日本にいる間に、治療は済ませておくべき。
当院の患者でも、海外勤務の方や留学予定の方が何人かいる。
可能な限り、日本で治療を受けておくよう勧告している。

日本における歯科保険治療は、先進国では前時代的なもの。
受けた治療が、先進国基準であれば、保険の適用でないことすらあるのだ。

海外で歯科治療を受ける 保険編 完