歯を守れ

いよいよ冬も本番。
スキーやスノーボードのシーズンである。
ウィンタースポーツは実は、歯の破折が非常に多い。
雪は氷は、滑りやすいからスポーツが成り立つのであり、それは同時に転倒を前提としていること。
ある程度スピードがのるようになれば、それ相応の対策があった方が良い。

私事であるが、北海道にいたころは、冬場はスノーボードに最低でも年50回は滑っていた。
やっていたのは、今でこそオリンピック種目になったビッグエアーやスロープスタイル。
当然周りは前歯を飛ばしたり、飛びすぎでランディングバーンをこえてフラット落ちし、ひざが顎に入って奥歯を粉砕など。
私は幸い歯のトラブルはなかったが、ひざがアバラに入ったりして、あばら骨の骨折は毎年のようにおこしていた。
今から考えると、もっと安全面に気を払うべきであった。

若き日の私
スノーボード

歯の破折を防ぐもの

ウィンタースポーツに限らず、ラグビーやラクロス、陸上ホッケーなどは、歯を守る必要がある。
コンタクトの強いスポーツであれば、顔面への打撃は避けられないことがあるからだ。
そのような時、役に立つのがスポーツ用のマウスピース。

既製品のマウスピース

スポーツ用のマウスピースは、アマゾンなどで買える既製品と、歯科医院で作成されるものとがある。
既製品は、だいたいの大きさの樹脂製の物を、お湯で柔らかくして歯にフィットさせるというもの。
安いというメリットはあるが、適合はそれなり。
性能もそれなりであることは否めない。

歯科医院でつくるマウスピース

歯科医院で作成されるものは、精密で歯ぐきまで広く覆い、機能は抜群といって良い。
一人一人に合わせたフルカスタムだからである。

まず、印象材で型をとり、それにエルコプレスという、機械にかける。
エルコプレスは、熱して柔らかくした樹脂シートを、歯型に向けて陰圧で引き、寸分の隙間もなく成型する。
こうしてできたマウスピースのシートを、必要な範囲にわたってトリミングし、完成。
厚さも、スポーツの種類や利用シーンに応じて薄いものから分厚いものまで自由自在。
もちろんシートの色やデザインも、選択可能。

当院で作成したマウスピース。赤は流血に見えるためおすすめではない
マウスピース

つくるところまでが、仕事ではない。
私は口腔内でマウスピースをかませて、当たり具合を調整する。
人間が最も力を発揮できるのは、臼歯部が均等に食いしばれる時。
例えば一部分だけ強くあったいたりしても、思うようにフルパワーを発揮することはできない。
このようにしてつくられたマウスピースは、安全面だけでなく、機能面でもパフォーマンスを発揮する。

総論

マウスピースは厳密には医療機器ではない。
とはいえ、作成の経験が豊富なドクター、特にスポーツをやっていたドクターがつくれば、非常に機能的なものができる。
もし既製品のマウスピースに引っかかりを感じたら、一度作成を依頼するのも良いだろう。
場合によっては、パフォーマンスが一次元上になることだって、珍しくはない。
何より歯は守るべきもの、きちんとした製品で安全にスポーツを楽しんでいただきたい。

スポーツマウスピース 完