仮歯をいれて、歯のイメージを完成させていく。
元の歯列
テンポラリークラウンをセット。歯軸は修正されたが色調が暗い
転々とするシェード
問題は色調だ。
テンポラリークラウンでは、手を加えていない残存歯にあわせて色を決めた。
しかしこれでは色が全体的に暗い。
残存している右上1番は、相当昔にコンポジットレジンで修復されたもので、レジンの変色により色調が暗くなっている。
色の分布も、切端にいけばいくほど色が濃く、普通とは逆になっている。
セット1回目、右上1にあわせないで、理想的な色をメタルボンドにのせる。
ところが色調の違いから、あまりにも右上1が目立ってしまった。
今度は目立たないように右上1にあわせて彩色する。
すると色調は合うが、暗くて美しさに欠け、ちょっとなあ、という感じになってしまった。
暗めに作成したメタルボンド
究極の選択
今、この歯に色を合わせれば、全体的に見た目は違和感はなくなる。
しかし、右上1番は、数年もたてば経年劣化でさらに変色がすすみ、周囲の歯との色調がずれてしまうだろう。
加えて、レジン修復されたこの歯は相当にガタがきており、近い将来全てを覆う形で補綴する必要があると予想できる。
そうなれば、全ての歯がセラミックになるのであるが、劣化した右上1の色調を引き継いでしまうことになる。
この場合にとり得る選択は二つ。
今、やや暗めで、歯列全体で目立たないように色を揃えるか。
それとも、右上1を無視して、補綴の時期が来た時に、白めの歯が並ぶようにするか。
それであれば、現在は歯の色の食い違いは避けれない。
結局・・・
将来的な展望を優先して、右上1に色を合わせることなく、白めの色調で補綴をおこなった。
右上1は目立つが、将来的には色が明るめの歯列として揃う予定である。
とはいえ、捻じれて不正を引き起こしていた歯列は補正された。
最終的な仕上がり
色調の違いは否めない
総論
補綴において、色をできる限り自然な形で美しくするのは永遠のテーマだ。
しかし、色調はもともとある歯牙との調和である。
色であれ形であれ、本来の歯牙があれば、それに手を付けることなく理想的な調和は難しい。
今回は、将来的にやり変えるということを前提に配色を決定した。
治療はその時の状況だけから決めてよいものではない。
数年後、さらにはそれ以上の年月の先にどうなっているか、どうもっていくのかを想像しながら設計していくべきだ。