難しい色合わせ

セラミックの歯は保険のプラスチックの前装冠と違い、変色しない。
それゆえ、最初に決定した色が、歯がある限り続く。
全ての歯をやりかえるのであれば話は簡単だが、残った歯と調和させなくてはならないので難しい。
今回は、その色合わせで苦労したケース。

前歯の修復

40代女性。
前歯の根管充填後の打診痛を主訴に来院した。
補綴前だったので、根管充填剤をはずして弱い薬剤で貼薬したところ、排膿が確認された。
根管充填の条件が揃っていないのに、充填したことにより歯根膜炎をおこしたとみられる。
根管治療をエビデンス(根拠)を持って治療している歯科医は、実はそう多くはない。

こうなると、全ての症状が落ち着くまで時間を要する。
他にも2本、根尖病巣がみられたので、根管治療をおこなう。
4本ある上顎の前歯のうち、実に3本が根管治療の対象歯。

根管治療

歯の根の治療は、根気のいる治療。
一度根の先に細菌感染をおこして、症状が出てしまうと厄介だ。
神経を除去、充填して数か月から数年して、細菌が増殖して病巣を形成し、症状が出る。
歯の根が複雑なかたちをとっていると、避けられない場合がある。

どうやっても無菌化や、症状がとれない場合は、歯根端切除の対象となる。
歯の上から治せないのであれば、外科的に歯ぐきの側から直接アプローチするやり方が必要。
ただし歯は短くなるし、失敗したら後はない。
そのため、基本的には、根幹治療が優先される。

最初は水酸化カルシウム製剤で無菌化をはかる。
排膿が止まったところで、消炎作用の強いメトコールで、歯根膜炎の寛解を目指した。
全ての症状が治まり、根管充填が終わったときには、約半年が経過していた。

補綴の経過

前歯群は捻転(ねじれ)がある不正歯列だったため、同時に修正することとする。
セラミックの治療なので、歯肉に深く埋め込むことが可能。
保険のプラスチックプラスチック製のものでは汚れがついて、あっという間に歯周病がすすんでしまうが、セラミックは汚れを寄せ付けにくい。
そのため、自然な仕上がりと、長い耐久性が得られる。

根管治療後、コア形成前の歯列
不正歯列

別の角度から見たもの
乱れた前歯

コアをたてたところ
支台築造

仮歯での治療

自費の治療なので、テンポラリークラウン(仮歯)で形態を微修正しながら、理想の歯の形を追求していく。
テンポラリークラウンは実はかなり高額。
技工料だけでも一本当たり2,000円ほどかかる。
他にも型取りや調整したうえでのセットとなると、コストはさらに増えるため、保険ではできない。

前歯となると見た目に問題が出るため、保険治療を考えるならば、できる限り歯冠が残っているうちに治療することをおすすめする。

続きます