非歯原性歯痛の分類 前編

本来の痛みの原因部位と違う部位が痛くなることを、関連痛・異所痛という。
非歯原性歯痛は、その一種。
今回はその痛みの種類を解説する。

歯原性のもの

非歯原性歯痛とは違うが、痛みの原因の歯とは別の歯が痛くなることがある。
これは、口腔領域において、最もよく見られる関連痛。

上の奥歯が痛い、という主訴で痛いというところをみると、特にどうということはない。
こういう時、私は同じ側の、下の歯に異常がないか調べる。
すると、大きな痛みを出しかねない虫歯に遭遇する。

このように、歯の痛みの位置というのは、結構あいまいなことが多い。
上下の違いが良くわからないのは、知覚過敏などでは頻繁にみられる。
これは、痛みを感じる三叉神経が、口腔領域手前で上下に分岐するためである。
痛みを感じている神経の大元がひとつであるため、このようなことがおこる。
ただし、左右をこえて痛みを過誤することはない。
神経は左右一対ずつ独立しているためである。

非歯原性のもの

歯が原因ではないのに、歯が痛くなるものの分類は、ガイドラインでは大まかに8種類に分類されている。

  • 筋・筋膜性歯痛
  • 神経障害性歯痛
  • 神経血管性歯痛
  • 上顎洞性歯痛
  • 心臓性歯痛
  • 精神疾患または心理社会的要因による歯痛
  • 突発性歯痛
  • その他の様々な疾患により生じる歯痛

筋・筋膜性歯痛

非歯原性歯痛の中では、最も高頻度にみられる歯痛で、全体の半数ほどを占める。
平たく言うと、咀嚼筋や顎を支えるインナーマッスルなどの筋肉痛を、歯の痛みとして認識してしまうことでおこる。
頭頚部の筋・筋膜痛症患者の約1割強に、歯痛がみられる。

トリガーポイントと呼ばれる、筋肉のこり固まった部分を押し続けると、歯の痛みが出てくる。
この筋肉の圧迫には、多少のテクニックがいる。
普通のクリニックレベルの歯科医がやると、上手く診断できない場合が多い。
私は頭頚部から、それに拮抗する筋肉まで立体的に把握していく。

筋・筋膜性歯痛では咀嚼筋に痛みを誘発する部位がある
筋膜性歯痛

私の患者でも、特に高齢の女性に何人か該当する症状がある。
これは、筋肉自体がもともと貧弱なためである。
入れ歯の痛みと混同すると、ドツボにはまる。

治療法

拮抗する筋肉も含めたマッサージが即時効果が高い。
あとは温シップなどの理学療法も有効である。
同じ姿勢の長時間の継続や、体の片側に重い荷物を持つといったことが発症につながりがちな傾向があるので、これを避ける。
筋弛緩剤の服用も有効だが、根本的な原因の除去ができなければ、一時的な寛解でしかない。
炎症像が筋肉にあるときは、ロキソニンなどの消炎鎮痛剤も有効である。

ひどい場合には、医科ではなく、腕の良い整骨院の先生を紹介して根本的解決をはかっている。

続きます。