鎮痛剤の種類と特徴 後編

前回は、歯科でもよく用いられ、非常にメジャーな非ステロイド系鎮痛薬について述べた。
今回は、それ以上に効果が強い鎮痛薬と、鎮痛補助薬について解説する。

オピオイド鎮痛薬

オピオイドはケシ(オピウム)から産生されたり、合成される鎮痛薬。
率直に言うと、麻薬である。
効果は強く、人類が手にする鎮痛薬の上位は、これをおいて他にはない。

有名なものは、モルヒネ。
痛みの程度によって、弱オピオイド、強オピオイドを使い分ける。
ガンの終末期医療の現場で、疼痛緩和には欠かせない。
歯科では、大学病院などでの臨床では使用されるが、クリニックレベルでは使用されることはまずないといって良い。

末梢が痛みを感知し、中枢へ伝達されるときに、いくつかの神経を乗り換えていく。
乗り換え地点で神経伝達物質による伝達がおこなわれるが、伝達物質の受容器をブロックするのがオピオイド。

副作用として、痛みの無い状態でモルヒネなどの投与をおこなうと、脳内の快楽中枢で快楽物質ドパミンが放出され、多幸感が得られる。
ところが、痛みのある場合には投与してもドパミンの放出はおこらず、多幸感はないが痛みは緩和される。
つまり、痛みに対して正確な量の投与をおこなえば、これほど有用な薬はない。

依存症

麻薬由来の鎮痛剤ゆえ、依存症が発現する。
アメリカでは、高額な医療が受診できない患者が、対症療法として処方されるオピオイドによる依存症が問題になっている。
依存症患者は200万人を超える。
かのマイケル・ジャクソンもオピオイドの過量摂取が、死亡の原因。

日本では、オピオイドの処方は厳格に管理されている。
医療用麻薬に指定されているためである。
手術などで用いたオピオイドはアンプルに残った量まで計測されるし、保管も金庫。
投与量も正確にはかられているため、薬剤投与による快楽もない。

ただし、弱オピオイドのリン酸コデインは、下痢止めとしてクリニックレベルで処方されることもある。
依存性はコカインの三十分の一程度とされている。

鎮痛補助剤

痛みには、通常の痛みである、体への異状を脳に伝える痛みと、神経自体が傷害されて出る痛みがある。
後者の痛みは、今まで扱ってきた鎮痛剤の機序による鎮痛では無効。
通常とは異なる方法で治める必要がある。
鎮痛補助剤として説明する。

プレガバリン

帯状疱疹などの神経障害性疼痛や、線維筋痛症症候群に用いられる。
神経の乗り換え地点であるシナプスで、神経細胞の伝達にかかわるカルシウムイオンの流入を妨げ、伝達物質の放出を抑制する。

依存性や休薬時の離脱症状があり、乱用に注意が必要である。
リリカが代表的な薬品

ノイロトロピン

人間の中枢には、痛みを抑制する調整系を持っている。
何かに集中したりするときに、痛みを忘れたりするのはこの作用。
この調整系のひとつが、脳幹から脊髄に作用する下行性抑制系。

この下行性抑制系をアゲめにすることで痛みを抑制するのが、ノイロトロピン。
ウサギにある種のウイルスを打ち、それによる炎症分画から取り出した製剤。
有効成分は不明、作用機序も不明という、わからないこと尽くしの不思議薬。
私からすれば、どうやってこの薬が生まれたのかが一番謎。

当院の非歯原生の下顎犬歯部の神経疼痛の患者が、これによる鎮痛をおこなっている。
服用してるときは効いてるのかよくわからないが、やめると効いていたんだなと感じるような効き方をする。
歯科では処方できず、医科に依頼する形となる。