一生に一度しかかからない水ぼうそう。
しかし、それは水ぼうそうとしての症状の話であって、水ぼうそうの原因ウイルス(VZV)は生涯体内に存在している。
それが再活性化し、症状をあらわすことがあり、その一症状が帯状疱疹。
VZVの再帰感染は、水ぼうそうの症状より厄介な場合がある。

VZVは神経細胞体に潜伏している。
体の抵抗力が低下した場合などに、潜んでいた神経の支配領域に限局して発症する。
そのため、発症領域が神経の支配領域に一致して左右どちらかに帯状に現れる。
これが帯状疱疹の名前の由来。
歯科関連では、三叉神経の支配領域に現れることが多い。

好発年齢は、50代以降に多い。
これは、加齢による免疫力が低下したため。
通常、VZVに暴露してから免疫は約20年ほどで弱くなる。
しかし、野生のVZVに不顕性に暴露されることで、ブースター効果により免疫は強化される。
ところが、加齢とともに胸腺は縮小し、免疫は低下していく。
これは、加齢が進むほどワクチンの効果が弱いこととも一致する。
このような状況下で、疲労や感染症、ストレスや抗がん剤投与という免疫低下を亢進するようなことがあった場合、VZVは再活性化する。

VZVの再活性化による回帰感染は、帯状疱疹も含めて、様々な症状と段階がある。
初期症状は皮膚症状であり、VZVの潜伏していた神経領域に 紅斑 → 丘疹 → 水疱 の順ですすみ、破裂した水疱が癒合してびらんを形成する。
粘膜である口腔内におこる症状としては、小水疱が発現すると、それが破れてびらん状、もしくは潰瘍状の口内炎を呈する。
この時期はウイルスが、ワクチン等を摂取していない人には水ぼうそうという形で感染しうるので要注意。

帯状疱疹で問題になるのは、実は皮膚症状ではない。
痛みこそが大問題、帯状疱疹関連痛といい、何種かに分類される。
まず皮膚症状の一週間前から、痛みや違和感、かゆみが出ることがある。
これを前駆痛という。
その後痛みは本格化し、皮疹が出てから10日目くらいにピークを迎える。
これを急性期帯状疱疹痛といい、痛みの程度は様々だが、人によっては耐えれないほどの痛みを呈する。
この痛みは神経の炎症による痛みで、侵害受容性疼痛に分類される。
痛みは皮疹の消失とともに寛解する。

皮疹の消失後も疼痛が残存する病態を、帯状疱疹後神経痛(PHN)という。
帯状疱疹発症者の10~25%に発症するといわれている。
若い患者ではほとんど見られず、高齢者は重症化しやすい。
刺激が無くても痛む自発痛と、わずかな刺激でも惹起する誘発痛が特徴的で、数か月から数年続く。
歯科領域では、健全な歯の痛みとしてうったえられることがある。
この痛みは神経変性による痛みで、神経障害性疼痛に分類される。
通常の痛み止めは効かず、患者のQOL(生活の質)は大いに低下する。
VZVによる疾患で問題になるのは、このPHNである。

それではこのようなVZVの疾患にどのように向き合えば良いのか。

続きます。