VZVの回帰感染の治療は、スピードが命となる。
ところが、前駆痛の時点で、皮膚科以外の診療科を受診することが多く、治療開始が遅れる場合が多い。
歯科でも単純ヘルペスとの鑑別診断に失敗して、治療が遅れることがままある。
片側性に、三叉神経の第2枝、第3枝のいずれかかに限局していたら、即皮膚科などに転科させることが重要。
あやしいと感じた時点で、自分での鑑別を放棄するべきだと考えている。
皮膚科医は、この疾患の鑑別はお手の物。
歯科としての対応は、アズレンスルホン酸のうがい薬等を処方して、口腔粘膜の回復を助けてやり、痛みに対してはロキソニンなどのNsaidを出すのが正解。
この段階ではまだNsaidは痛みに対して有効とされる。
まちがっても、様子を見ましょう、などとやってはいけない。

皮膚科等の帯状疱疹の治療は、抗ウイルス薬の全身投与が基本となる。
皮疹出現から48時間以内の治療開始が理想であり、遅れるほどVZVの神経への侵害がすすんでしまうから。
早期の治療は皮疹消失後のPHNの発症を有意に減少することができる。
特に高齢者や、全身疾患がある患者はPHNの発症の可能性が高く、素早い対応が必要。
不幸にしてPNHが発症した場合は、リリカや他の三環系抗うつ薬、重症の場合にはモルヒネやコデインなどの麻薬系の薬剤が使われる。

帯状疱疹の重症化はPHNの他にも、ラムゼイハント症候群がある。
これはVZVが顔面神経の膝神経節に潜んでいた場合に起こりうる病状。
耳介周囲や、口腔・咽頭に帯状疱疹が出現した場合は最大限の注意を払う必要がある。
症状として末梢性顔面神経麻痺や、難聴やめまいなどの第Ⅷ脳神経障害がおこる。
予後は悪く、後遺症が残る可能性が高い。
ただし、早期の治療がおこなわれた場合治癒率は高くなる。

帯状疱疹はこじらせてしまった場合、予後が非常につらい疾患。
小児へのワクチンが義務化された現在、野生のVZVの暴露が激減し、免疫の再強化が期待できなくなっている。
そのため、今後回帰感染が激増することが予想される。
できることであれば、40代以降、免疫力の低下する20年ごとにワクチンの接種が望ましい。
不幸にして発症した場合は、疑わしい時でもすぐに皮膚科を受診すること。
すべての歯科医においても、単純ヘルペスとの鑑別診断ができるようにはなっていてもらいたいものである。

帯状疱疹 完