水ぼうそうは子供の病気。
一度かかっておけば、二度とかからない。
そのような認識を持たれている方が多いだろう。
しかし、災害は忘れたころにやってくる、ではないが、高齢になってから別の形で患者を苦しめる。
それが、帯状疱疹。
水ぼうそう、帯状疱疹ともに同じウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルスが原因になっている。

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)はヘルペスウイルス属のDNAウイルス。
空気感染をおこすほど感染力が強い。
初期感染におけるウイルスの体内の伝播経路は巧妙だ。
エイズの病原体であるHIVウイルスが免疫系に感染するように、VZVも免疫系のT細胞、樹状細胞を利用して全身に広がる。
上皮に伝播したウイルスは、特徴的な症状である水泡や膿疱を呈する。
最終的にはウイルスは神経末端に到達し、そこからさかのぼるように神経細胞体にたどり着き、そこに終生潜伏する。

VZVの初期感染である水痘(水ぼうそう)は冬から春に流行し、感染後2週間ほどの潜伏期を経て発症する。
主な症状は水痘と膿瘍、そして発熱である。
ただし、まったく症状が出ない不顕性感染であることもある。
現在では乳児にワクチンの接種が義務付けられるようになった。
ところが、その影響がなんと大人にでてしまった。

ブースター効果という言葉がある。
ブースター効果とは、同じ病原体に二回触れることで、免疫が強化されること。
一度VZVの免疫を持った人が、再び周囲の幼児に感染しているVZVに再び触れることにより追加免疫(ブースター効果)効果を得ることができる。
インフルエンザワクチンを二回打つのも、このためである。

後述するが、神経に潜伏していたVZVが再活性化して発症する疾患を帯状疱疹という。
乳児にワクチンが接種されるようになったため、小児に感染者がいなくなってしまった。
野生のVZVに触れる機会が減ってしまい、VZVに対する追加免疫獲得機会が減ってしまったため、じわじわと帯状疱疹が増加してきている。

同じウイルスであるのに、流行のサイクルは水痘と逆の夏から秋である。
これは、水痘流行により、VZVに再び触れることで、VZVへの免疫力が強化される人が多いのが水痘の流行期というわけだ。
だから、水痘の少ない時期にはVZVの再活性化がおこりやすい。

これを防ぐには、大人にもワクチンを打つこと。
ただし、実費であるため保険は効かない。
だいたい一万円前後。

一度水痘にかかることで、神経細胞体で潜伏しているVZV。
これが、再活性化することで様々な症状を呈する。

続きます。