小児の予防
小児の歯牙は、う蝕感受性が高いが、歯周組織の疾患がほとんどみられない。
そのため、予防の方向性も大きく異なる。
歯科医院での予防
シーラント
乳歯や永久歯の臼歯部の溝(裂溝)を埋める樹脂、セメント、もしくはそれらの混合物。
接着性は弱く、日常生活で徐々に剥落していく。
小児の歯は咬耗がすすんでおらず、溝が深いため食物や歯垢が残りやすい。
それを防ぐため、あらかじめ埋めてしまおうというのがその目的。
裂溝を埋めるシーラント
光重合型でその場で埋めてしまうやり方が一般的だが、私は練和タイプの充填用のフジナインを使用することがある。
不協力児の咬合面に、さっと指で塗り付けることで一瞬で処置を終わらすため。
フジナインは水の存在下でも硬化・接着する。
なお、フジナインの方が、接着力、フッ素徐放性に優れる。
ただしコストは高い。
フッ素塗布
歯は食物などに含まれるフッ素をとりこみながら、その化学組成を変化させ強化される。
乳歯や萌出初期の永久歯は、歯の主成分であるハイドロキシアパタイトのフッ素置換がすすんでおらず、う蝕に対する抵抗性が低い。
大人の歯が小児の歯に比べて虫歯になりにくいのは、清掃の上達のみならず、歯牙自体が外来のフッ素を取り込んで強化されている影響も大きい。(フッ素について詳しくはこちら)
海外ではフッ素が水道水に添加されてる場合もあるが、フッ素は有効量と中毒量の差が小さく、日本ではおこなわれていない。
そのため、歯牙への人工的なフッ素処理は、歯磨き粉や歯科医院での塗布に限られる。
具体的には、歯面清掃の後、フッ素ゲルを歯に塗るといった簡単なもの。
30分ほどうがいを控え、歯牙表面のフッ素濃度を維持することで作用させる。
虫歯になった歯の治療ではなく、予防のため本来は保険外となる。
そのため費用は実費の場合が多い。
大阪歯科大病院で2,000円ほどだったと思う。
当院では、定期的なクリーニングを受ければ、無料でおこなっている。
当院で使用しているフッ素製剤
家庭での予防
歯磨き
小児の歯磨きは、親が手伝ってあげることが必要。
問題はその年齢。
小学校中学年くらいで、子供任せにする家庭が多いが、これは早い。
特に男児はいい加減、まともに磨ける子はごくわずか。
小学校卒業までは仕上げ磨きは親がおこなってあげるべきである。
食習慣
食習慣は大きく虫歯へのなりやすさに影響する。
お菓子や砂糖の入った飲料の摂取は、時間を決め間隔を十分開けておこなうことが望ましい。
砂糖の摂取により、細菌により酸がつくられるが、それが中和されるのに約1時間かかるため。
だらだらとした摂取は、口腔内の常時酸性化を意味する。(詳しくはこちら)
虫歯の罹患は避けられない。
まとめ
現代の子供たちの平均う蝕本数は約一本。
ここ20年ほどで激減した。
歯医者の増加と、正しい予防が浸透した結果といえる。
とはいえ、この数値は歯が全くない子とたくさんある少数の子の平均。
予防の知識と定期的な検診が行き届いていない子供には、虫歯は多い。
子供の虫歯は、親の責任。
きちんとお手入れし、予防してあげることが大切である。
小児の治療 完