知覚過敏の治療は、前回解説した、象牙質がむき出しになっていることを解消することが主流である。
各メーカーから様々な治療薬が出ている。

①過敏になった神経自体を鎮める方法
これは、象牙質に何かしらの処置を加えることなく、痛みの受容器官である神経を落ち着かせるもの。
代表的なのは、歯磨き剤のシュミテクト。
硝酸カリウムのカリウムイオンが、象牙細管に入り込んでいる神経終末を脱分極させて神経伝達を妨げる。
効果は、そこまで高くは望めず、軽度の知覚過敏の人が1カ月ぐらい使用して、マシになったかな、という程度が多い。

歯髄炎に移行しかけるほどの重度の知覚過敏の患者には、ロキソニンなどのNsaidを連続投与することがある。
刺激に耐えられず歯髄炎になってしまうと、神経が不可逆的な器質変化をおこし、神経の除去を余儀なくされてしまう場合がある。
そのため、消炎鎮痛剤であるNsaidの消炎効果で神経の鎮静化をはかりつつ、他の知覚過敏の処置をおこなう。

②象牙細管の内部を閉塞させる方法
微細な象牙細管内に薬剤を浸透させ、結晶化させるなどの方法で象牙細管を詰まらせる。
イメージとしては、レンコンの穴にからしを詰めて辛子レンコンをつくるような感じ。
スーパーシールが代表薬剤で、使用インプレッションとしては知覚過敏の薬品中最も効果が高い。
わずか一回の塗布で完全に症状が無くなるケースもよくある。
ナノシールは、一応表面コーティングとうたっているが、どちらかといえば閉塞タイプの使用感がある。

象牙細管の閉塞イメージ

知覚過敏抑制剤・象牙細管内晶出タイプ

知覚過敏治療の要・スーパーシール

スーパーシール

2液タイプのナノシール

ナノシール

③表面の象牙細管開口部をふさぐ方法
象牙質をコーティングし、表面に開いた穴をふさぐ方法。
最初にこれを作用させると、前述の象牙細管内部を閉塞させる薬剤は浸透できなくなる。
そのため、当院では閉塞タイプを充分作用させてなお効果が薄い場合に用いる。
被膜の厚さがメーカーにより違い、効果に差がある。
被膜が厚すぎると、歯垢を寄せ付けやすくなるきらいがあるため、状況により可能な限り薄いものを選択している。

表面コーティングのイメージ

知覚過敏抑制剤・表面コーティングタイプ

被膜形成型のシールドフォース

シールドフォース

被膜の分厚い3M・XTバーニッシュ

XTバーニッシュ

 

また、レーザーによる開口部の閉鎖という術式がある。
使用感としては、あまり効果があるようには感じなかった。
薬剤と違い、広い面を均一に隙間なくレーザーを作用させるのが困難なこと、装置を入り組んだ方向に入れるのが難しいことが原因だと思われる。

④薬剤を長時間作用させる方法
専用のトレーなどで、十分な時間象牙質に薬剤を浸透させる方法であり、重度の知覚過敏に著しい効果がある。
作用時間は一回20分~1時間。
ホワイトニング後の知覚過敏の重症化には大きな効果がある。
使う薬剤は、既製トレーではUltraEZ、個人トレーではスーパーシールを用いている。
コストが高額なため、当院では自費診療となっている。

既成トレーがセットになっているUltraEZ

ultraEZ

これらの術式を組み合わせることで、ほとんどの場合鎮静化が達成できる。
私自身、20年ほど前、知覚過敏に苦しんだが、治療の進歩で今では割と簡単に寛解できるようになった。
医療の進歩を実感せずにはおれない。

知覚過敏 完