各論に移る前に、医療関係者がどのように抗菌薬の選択をおこなっているかみてみよう。
実は、個人開業医と病院医で大きく選択内容が変わる。
以前、病院勤務医と飲んでいた時のこと

医「どうして歯科医はジスロマックをバンバン出すんだ? 俺らでもめったなことでは出さないし、下手に出すと呼び出し食らうぞ」
私「歯周病が治る、とか言ってセミナーまで開く奴がいるんだ。ジスロはバイオフィルム突破するから」
医「そりゃ治るだろ、ジスロなんか使えば。歯科なんかで使って良い薬じゃないだろ。のちのち困るの俺ら(医科)だぞ。」
私「おっしゃる通り。けど歯科はそれを理解できるだけの頭を持ち合わせてない奴が多いんだ。賢い奴なら、くそ高い私立歯学部なんか行かずに医学部いってる。恐ろしいことに歯医者の3分の2はそういった私立大学を卒業してるんだよ。そもそも歯周病は治らない、症状を一時的に抑えているだけなんだ。近所でもいるぞ、ジスロで歯周病やってるとこ」
医「歯医者はガイドラインは読まないのか?いろいろまわってくるだろ」
私「大学病院とか病院上がりの連中は読むね。けどそうでない連中は金にならないもんは読まん、読んでも理解できんしね。だから薬屋の言いなりに薬を出す。マクロライドだけでなく、キノロンや第3世代のセフェムなんかも人気だぞ」

実は、抗菌薬の適正使用については、様々なところからガイドラインが出ている。
厚生労働省は馬鹿でも理解できるようなかなり優しいものを出してるし(こちら)、医科のいろんな学会や、しっかりした病院は独自によくできたガイドラインを公開までしている。
病院勤務医は、それをもとに処方するので、わりと理にかなった処方をしている。
以前、大阪警察病院の救急の処方を見たことがあったが、うなるほどのレベルであった。
ガイドラインに目を通していれば、おのずと抗菌薬の選択は決まってくるはずなのだが、ほとんどの歯科医院ではかけ離れた処方をおこなっている。

なぜこんな処方をおこなうのか。
ひとつは勉強不足のため、口腔内の炎症の起因菌を把握していないこと。
実は、口腔内の炎症の起因菌はしれている、間違ってもコレラ菌などは出てこない。
ところが、そのことを理解していないと、やたらと抗菌スペクトルの広い薬剤を使いたがる。
なぜなら、炎症が引かないと困るから。
要は、これだけ広い範囲をカバーしてるから、とりあえず出しときゃ当たるだろ、というレベル。
別にスペクトルの広い抗菌薬が、強力というわけではないのだが。
で、本来使用すべき状況で、薬が効かず、医科が困るという状況になる。
できないドクターは薬が効かないことを恐れ、できるドクターは薬が効かなくなることを恐れる。

もう一つは、薬の販売会社のMR(医薬情報担当者)の情報を鵜呑みにしすぎていること。
売る方とすれば、特許の切れていない、できるだけ高い薬を買ってもらうにこしたことはない。
そこで、MRはあの手この手で、古い薬をこきおろし、新しくて薬価の高い薬を持ち上げるのだ。
ドクターがある程度のまともな薬理を理解していれば、簡単に見破れるのだが、残念ながらそうでないドクターが圧倒的に多い。
現在の歯科の薬価点数をあげてみる。(1点=10円)

ジスロマック ドライシロップ 202点
ジスロマック250㎎ 2T    46点
クラビット500㎎ 3T     114点
クラリス200㎎ 3T      20点
フロモックス100㎎ 3T    46点
ダラシン150㎎ 4C      9点
サワシリン250㎎ 3T     3点

私が主に使うのは、下の二つ。
ほとんどの歯科医が良く使うのは、上の方の薬剤。
良い薬ほど、薬価を高くすべきだと思うが、保険制度はそうなっていない。
サワシリンなどは良い薬なのだが、薬価が低いため薬屋はいろいろ理由をつけて他の薬をすすめる。
耐性菌で古い薬は効かないですよ、が殺し文句。
もちろん、ガイドラインの推奨とは真逆なのだが、分かったうえで売り込むのだ。
彼らも仕事なので、理解できなくもないが、歯科医がそれにほいほい乗っかるのはいかがなものか。
歯科だけが医療の全てではないのだから、きちんと勉強すべきだ。

私は、歯科の抗菌薬の選定に制限をかけるべきだと思っている。
特定の薬剤の処方にあたり、細菌検査を義務付けたり、書類の提出を求めるなど。
もちろん緊急時などを除いて、である。

続きます