抗がん剤の副作用

ガンの化学療法において、問題になるのは自己への影響。
化学療法の影響は、口腔内には比較的強くでる。

抗がん剤と抗生剤の相違点

細菌への化学療法(抗生物質)は、細菌の細胞と人間の細胞の、構造や増殖過程の違いの部分を選択的にたたく。
細菌と人間では、違いの部分はかなり大きい。
そのため、人間の細胞には影響を及ぼさず、細菌だけを狙い撃ちにできるというわけ。

対して、ガン細胞はもともと自分の細胞の一部が、複製エラーをおこして発生したもの。
つまり、自分の細胞との相違点は、極めて小さいといって良い。
その小さな違いを、たたくのが抗がん剤。
ただし、違いが小さすぎるため、自身の正常な細胞も少なからずダメージを受ける。

抗がん剤には感受性という概念がある。
細胞の感受性が高いということは、薬剤に対して効果があるということ。
しかし、いくらガン細胞への感受性が高くても、正常な細胞への感受性も高ければ、ガンと同時に自身もやられてしまう。
それゆえ、がん細胞が感受性が高く、正常細胞が低いものが抗がん剤として選ばれる。
とはいえ、自身の細胞に全く影響を及ぼさないような抗がん剤は、存在しない。

化学療法がもたらす口腔内障害

ガン細胞は非常に活発に増殖する細胞。
抗がん剤はその増殖を阻害するような働きのものが多い。
つまり、活発に分裂活動しているほど、薬が効くというわけである。

粘膜への影響

ここで問題となるのは、口腔や消化管などの粘膜の細胞。
ここは細菌防御などの最前線。
粘膜は常にはがれ落ち、そして速やかに修復される。
つまりは、活発に分裂している組織の細胞であるということ。

抗がん剤はそれらの組織の細胞の活動をおさえてしまう。(抗がん剤で髪が抜ける、毛母細胞がイメージしやすい)
そのため、わずかな外部からの障害で、びらんや潰瘍をおこす。

口腔領域においては、口内炎や粘膜炎といった症状がおこる。
普段生活しているときにできるような程度ではなく、重度の摂食障害をおこすようなひどいもの。
これが、薬剤にもよるが、おおむね40%程度の患者におこり、そのうち約半数が重度のため投薬計画の見直しを強いられる。

抗がん剤はまともな食事すらままならないことがおこる
抗がん剤

唾液の分泌障害

ほとんどの薬剤は、腺組織の分泌を多かれ少なかれ減少させてしまう。
その中でも、抗がん剤は強烈な分泌抑制をきたす。

唾液の分泌低下は、自浄作用の低下によりう蝕や歯周病のリスクを跳ね上げる(後日解説予定)。
また嚥下や味覚にも深刻な影響をもたらすため、食欲不振、摂食障害などにより患者の体力を大幅に削っていく。

続きます