歯周病が引き込む虫歯

根面う蝕は高齢者の虫歯だ。
歯ぐきが健康で、セメント質が十分に被覆されている若い人には見られない。
歯周病が進行し、弱いセメント質が露出すると、要注意。

正常な歯周組織
正常な歯周組織

歯周病が進行した状況
歯周病が進行

歯周病が進行すると、歯周ポケットという歯と歯ぐきの隙間が深くなる。
深くなると、エナメル質とセメント質の境界を越えてしまう
手入れが不十分であれば、ここに歯垢や歯石が沈着する。
保険適応の銀歯やプラスチック製の前装冠がいれられていると、歯垢との親和性が高いためさらにリスクが高い。

根面う蝕の原因菌

普通の虫歯と異なるのは、この歯垢に住む細菌。
普通の虫歯はミュータンス菌が主で、砂糖などを基質とする。
ところが根面う蝕の原因菌は、主にアクチノマイセス・ビスコーサス。
この菌は、砂糖のみならず、デンプンですら基質とする。
つまり、米やパンでも虫歯を引き起こす。

かつて砂糖がなかったころは、古代人などの虫歯といえば根面う蝕のみであった。
これは、埋葬されていた古代人などから調べたもの。
デンプンを基質とすることができるので、加齢で歯ぐきが下がった場合に罹患していたのである。

治療

根面う蝕は歯の側面にできるため、基本的には金属治療はとりにくい。
そのため、コンポジットレジンやグラスアイオノマーなどの充填修復が主となる。
水の存在下でも硬化接着し、フッ素徐放性のあるグラスアイオノマーが最も適している。
しかし、歯ぐきの縁下深くにできてしまった場合は、手が付けられない場合がある。

典型的な根面う蝕。歯冠は無事だが、歯根の虫歯が大きく抜歯適応である。
根面う蝕

予防

まず第一に、歯周病を進行させないことが最大の予防。
歯周病は35歳くらいから症状として出てくるが、少なくともそれまでに、歯科医院で定期的に歯石の除去等を行うこと。
そして何より大切なのは、日々の歯磨きである。
フッ素を高濃度に含む歯磨き粉では、根面う蝕の発生率を3割程度低下させることがわかっているため、推奨できる。

もし歯周病が進行していたら、歯周基本治療などの歯周病の治療が必要になる。(詳しくはこちら
歯周病で下がった歯ぐきは基本的に元には戻らないので、脆弱な露出セメント質は外界にさらされっ放しである。
それゆえ、高度な清掃に加え、歯科医院での定期的な歯石や、縁下の歯垢の除去は必須である。
それでも、簡単に根面う蝕が発生してしまうのが頭の痛いところである。

総論

歯周病の恐ろしいところは、歯周組織の破壊だけではない。
虫歯もまた、歯周病が原因で引き起こされる。
高齢になれば、そのリスクは跳ね上がる。
定期的な歯科医院でのメンテナンスが重要である。

根面う蝕 完