標準化されている予防策はふたつ。
ひとつめは、ユニバーサルプリコーション。
スクリーニングなどを通して感染が判明している場合。
1985年にCDC(アメリカ疾病管理予防センター)により提唱された。

北海道大学病院のマニュアルからの抜粋では
「患者の血液,体液(唾液,胸水,腹水,心嚢液,脳脊髄液等すべての体液),分泌物(汗は除く),排泄物,あるいは傷のある皮膚や,粘膜を感染の可能性のある物質とみなし対応することで,患者と医療従事者双方における病院感染の危険性を減少させる予防策である。」
となっている。

ところがHIVの流行によりこれだけでは不十分であることが判明した。
HIVは感染しても、発症するのは一部。
HIVキャリアで発症しないような場合を、不顕性感染という。
そのため、キャリアであることを自覚しないまま性生活等をおこなった結果、感染が爆発的に広がった。
HIVは感染してから検出できるまでタイムラグがある。
そのため、不顕性感染患者からの感染という新たな問題が突きつけられた。

そこでCDCは1996年、ユニバーサルプリコーションを発展させた予防策を発表するに至る。
それが、スタンダードプリコーション(標準予防策)である。
これは、「感染症の有無にかかわらずすべての患者に適用する疾患非特異的な予防策」という概念。
すべての患者の湿性生体物質は、感染の可能性があるものとして取り扱うこととして、対象が拡大された。

当院では、スタンダードプリコーションに基づいて感染予防をおこなっている。
使用した全ての機器は滅菌などの処理が施される。
加えて、HBVなどの感染症の罹患者に対しては、使用機器を専用に設け、使用したユニットや技工物に使う印象に至るまで感染源の不活化を徹底している。
これは来院する患者のみならず、自分を含めたスタッフの感染から防衛するため。

 

滅菌の要・オートクレーブ

オートクレーブ

 

感染症患者専用の機器ワゴン・右の白い一般用とは区別される

感染症患者専用機器

 

古い歯医院や、スタンダードプリコーションの概念の前の時代に歯医者になったドクターには、いまだに十分とは言えない衛星環境で治療している場合がある。
患者自らも、受診している医療機関がどのような感染対策をしているかチェックする必要がある

感染対策を考える  完