左右別々の入れ歯
70代前半女性。
入れ歯のクラスプ(金属バネ)の審美性に不満があり来院。
左右一体型の入れ歯であることも苦痛だという。
できれば左右ばらばらの小さめの入れ歯が良いとのこと。
AIデンチャー以外の選択肢はない。
残存歯の状況
模型上での残存歯
設計
左右一体型のほうが、メタルプレートによる大連結子を設けることができ、剛性を向上させることで、かみやすい入れ歯となる。
説明したが、それでも舌の触れる位置に何もないのが良いとのこと。
通常であれば、左右一体型で剛性に優れた設計をとる。
AIデンチャーのメリットの「かめる」をフルにいかすため。
しかし今回は、左右を分けたセパレートタイプの設計をおこなう。
幸い、右側には後方に7番が残っており、左側には45番が残っている。
維持力・支持力においてAIデンチャーであれば、十分に咬合能力を引き出せる配置である。
右は37番にウイング(樹脂製のバネ)と調整用ワイヤー、左は45にウイングと45間の調整用ワイヤーを配置する設計とする。
試適
試適用咬合床でのウイングと人工歯配列
口腔内の試適の様子。ウイングが目立つ
試適すると、右3番のウイングが目立つため、ウイングをつめた形状に再設計しなおす。
後方に7番があり、こちらに維持力を振り分ける。
完成
完成したAIデンチャーを咬合面から見る
同側面観
口腔内でのAIデンチャー。3番のウイングが目立っている
ウイングをつめた形状にしたものの、ウイングが目立つ結果となってしまった。
一部をクリアとしたが、それでも後方の樹脂色が目立ってしまう。
クリア樹脂の範囲を広げることとする。
クリア部分を大幅に拡大したAIデンチャー
改良後の口腔内での様子。目立たなくなった。
AIデンチャー装着観。審美的に満足のいく結果となった。
総論
残存歯の配置状態が良好であったため、左右のセパレートタイプにしたことによる咀嚼能力の低下は大きくはなかった。
かめないものはないし、中央部の連結子がないことで非常に快適とのことである。
このケースにおいては、ウイングが目立つということによる問題があった。
普通のノンクラスプデンチャー(金属バネなし入れ歯)であれば、ピンクの単色の樹脂しか選択肢がないため、解決の方法はない。
透明の樹脂の選択でき、なおかつ任意に樹脂の打ち替えの可能なAIデンチャーであればこそ、アレンジが可能であった。
なお、審美面においても最終的に患者は非常に喜ばれ、満足のいく結果となった症例であった。