梅毒の診断・治療

診断

梅毒の病態はステージによりころころ変わる。
それゆえ、鑑別診断には抗体検査が用いられる。
有名なワッセルマン反応を利用したPRR、トレポネーマ抗原による検査TPHAを組み合わせて判定する。

治療

抗生剤の登場まで、梅毒は不治の病であった。
しかし、1928年に最初の抗生剤・ペニシリンが発見され、実用化されると歴史が変わった。
いまでも梅毒トレポネーマのペニシリン感受性は100%である。

そのため、治療にはペニシリン系抗生剤であるアモキシシリンの4週間投与がおこなわれる。
ペニシリンがアレルギーなどで使えない場合は、テトラサイクリン系のミノマイシンや、マクロライド系のエリスロマイシンが使われる。
その際、発熱・悪寒・頭痛・筋肉痛などがおこる場合がある。
これをヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応といい、梅毒トレポネーマが一気に死滅した際、菌体内毒素が血液中で急上昇することで起きる。

梅毒治療の特効薬・ペニシリン系のアモキシシリン製剤
アモキシシリン

予防

日本における新規感染者は年間1000人ほど。
近年増加傾向にある。
昨年は5000人をこえる感染があり、大流行となった。

予防としては、不特定多数の相手とのセックスをさけること。
コンドームの着用と、オーラルセックスを避けることであるが、100%の予防は不可能。
また、本疾患はHIV(エイズ)と併発することが多く注意を要する。
免疫不全により、症状が通常の場合よりはるかに早いステージ進行がおこる。

先天性梅毒

歯科とかかわりのあるものとして、先天性梅毒がある。
梅毒トレポネーマは胎盤通過能があるため、胎児は先天的な感染がおこる。
先天性梅毒もまた、発症の時期により症状が異なる。

感染から1年未満を早期梅毒、それ以上を後期梅毒と分類する。

胎児期

死産、早産、奇形などがおこる。

早期梅毒

出産直後から生後3か月で、発疹や全身のリンパ節腫脹、肝脾腫、骨炎、軟骨炎がおこる。

後期梅毒

学童期以降に、ハッチンソンの三徴候と呼ばれる、実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯という症状が現れる。
ハッチンソン歯は、永久歯の中切歯の先天的な形態異常。
先割れスプーンのような形態を示す。

歯科医師国家試験で頻出するも、私は見たことがないし、現代日本で遭遇するのは宝くじに当たるより稀である。

続きます