かつて、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死は治療に難航した。
休薬して抗生剤を長期投与し、病態を抑え込むくらいしかなかった。
大きな顎骨壊死では外科手術で、壊死部位を切除するなど。

しかし一年少し前、ついに治療ガイドラインともいうべきものが完成した。
北大歯学部口腔外科、鄭漢忠教授によって。
先生には学生時代から大変お世話になった。
天満出身の、大阪弁の達者な先生。
大阪にいらっしゃった際、細かくご教授いただいた。

その術式は、壊死領域の削除。
壊死部位には生体反応はない、つまり血流もないということ。
壊死部位を手術にて開放し、出血がみられる程度にまで削り取る。
生体反応のない壊死部位は、廃墟のようなもの。
廃墟を壊して更地にしないと、新しい組織は建てられない。

ビスフォスフォネート系薬剤は、現在第3世代まである。
1日1回服用の第一世代、週1回の第二世代、第三世代は月1回。
世代が進むごとに、効果は10倍、副作用は10分の1以上の改善があるとされている。
第3世代の内服タイプの副作用発生率は1パーセント未満。

しかし、未だに第二世代を処方する医者がいるので要注意。
当院近くのクリニックも第二世代を処方しているところがある。
薬屋さんと何かあるのかと、変に勘ぐってしまう。

かつては抜歯などを行う際は、3か月程度休薬したうえでおこなっていた。
現在当院では、顎骨壊死の治療法の確立に加え、副作用の発生率が低くなってきているため休薬することなく施術している。
もちろん、服用が事前に分かっていれば、必要な外科処置等は済ませておくに越したことはない。
もし、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死が起きた場合は、提携病院での治療となるが、幸い今のところ罹患はなし。

ただし、感染をきちんとコントロールすることが鉄則。
使用する抗生剤は殺菌的かつ血中濃度の高くなるペニシリン系。
炎症等で血流が乏しくなっても、効果が維持しやすい。
特にこのような薬剤で生理活性が低下している場合には有効。
血中最高濃度は、フロモックスの3倍に達する。
古い薬なので効果がないと勘違いしているドクターが多いが、充分、いやそれ以上に効く。
現に、日本循環器学会など関連4学会の、感染性心内膜炎の予防ガイドラインは、ペニシリン系を術前にまとめて服用となっている。
抜歯に、静菌的な効果のクラリスを出す歯医者は言語道断。

かつて、散々苦労したビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死だが、薬剤自体の進歩と、治療法の確立でようやく解決しつつある。
ほんの2,3年前を思うと隔世の感がある。
今後も様々な薬品などでこのような難しい問題がおこるのだろう。
細心の注意と、新しい治療法の研鑽は必須だ。

骨粗鬆症とビスフォスフォネート製剤 完