薬で治す歯周病の治療の実態

薬で歯周病を治すとうたう歯周内科は、保険外適用が多い。
保険治療でもまかなえる歯周基本治療は、チェアタイムのわりに利益が薄い。
そのため、短い検査で投薬すれば即利益になる内科的療法に、飛びつく歯科医が続出した。

病気のねつ造

問題は、疾患であるとの判断のしかた。
この療法は、検査が陽性で、投薬してはじめて金になる。
つまり、陽性であることが必要。

前回までの解説で、歯周病の診断は、歯周ポケットの深さや歯槽骨の吸収レベルによることを書いた。
しかし、これでは検査が陽性にならず、自費治療に誘導できない患者が出てくる。

病原菌検出のからくり

そこで、顕微鏡検査やDNA診断で歯周病源菌を診断する方法が取り入れられた。
歯周病菌は、常在菌。
検出できて当たり前、顕微鏡で見れば歯垢の中に細菌がいるのは当然のこと。
当然、細菌のDNAも検出される。
この方法であれば、「歯周病源菌がいます、退治しないと大変なことになるよ」と治療に誘い込めるというわけである。

以前も書いたが、歯周病菌の存在 ≠ 歯周病
これをあたかも、歯周病菌の存在 = 歯周病 のようにすり替えていることが大問題。

これはいたずらに不安をあおり、不要な投薬を促している詐欺行為に等しい。
医学的には、病気のねつ造であり、そこには何のエビデンス(根拠)もない。

当院での診断では

この治療に関して相談を受けることがたびたびある。
細菌がたくさんいて、治療しないと歯がなくなるといわれた。
この治療法でなければ、歯周外科治療で、歯ぐきの手術が必要といわれたなど。
DNA検査・顕微鏡検査では、重度の歯周病との診断が下されていた。

臨床的に問題のない症例でも、歯周病菌は検出され、歯周病の治療ありと診断されてしまう
歯周検査

私が検査すると、歯周病と診断できないものや、軽度の歯周病で、基本歯科治療で十分に治せるものが多数あった。
ましてや、歯周外科に該当するようなものは、普段でもそこまで多くはないのだ。

許しがたい過剰医療

不安をおあり、不要の投薬による治療。
許される話ではない。
その結果で、耐性菌などの問題もおきてしまう。

いくら歯医者が儲からない時代といっても、ありもしない病気をねつ造し、あたかも最良な治療法のように不要な治療をおこなうことはいかがなものか。
それが医学的に妥当であればともかく、治療法として問題があるものであるからなおさらだ。

歯周病治療を含め、特に歯科の世界ではエビデンスに乏しい治療があふれている。
うまい話に踊らされず、セカンドオピニオンなど積極的に活用してほしい。

番外編に続きます