即時充填治療の材料 その4
グラスアイオノマーセメント修復 続き
グラスアイオノマーセメントによる治療
グラスアイオノマーはそれ自体が接着力を持つ材料である。
それゆえ、レジンのようにボンディングやエッチングの処理が不要。
金属冠を接着するのに用いる合着用のグラスアイオノマーさえある。
虫歯を除去し、できた窩洞にグラスアイオノマーを充填しさえすればよい。
純粋なグラスアイオノマーは、粉と液を混合すれば硬化が始まる、そのまま充填する。
レジンとのハイブリットは、光触媒が添加されているため、照射器をあてれば硬化が始まる。
グラスアイオノマーは初期硬化において、水を嫌う。
とはいっても、レジンほどシビアではなく、バーニッシュと呼ばれるセメダインのような被膜を上に塗ればよい。
硬化後は、咬合調整などをして終わり。
レジンに劣らず簡単である。
グラスアイオノマーの特徴
フッ素を徐放する。
主成分であるアミノシリケートガラスにはフッ素が含まれている。
このフッ素が歯質をフルオロ化して強化する。
また、再石灰化を誘導するうえ、抗う蝕作用がある。
そのため、小児や障害者などのカリエスリスクの高い患者に、良好な成績が得られる。
また、シーラントとしても用いられる。
寸法変化が少ない
レジンは重合収縮が欠点であるが、グラスアイオノマーにはそれがほとんどない。
そのため、グラスアイオノマー自身の持つ接着性と合わせて、二次う蝕になりにくい。
生体親和性が高い。
歯髄為害作用の強いレジンに比べ、細胞毒性がほとんどない。
そのため、歯髄深くに達する虫歯の除去後の空間にはグラスアイオノマーセメントによる裏装をおこなう。
色調に劣る
レジンに比べると、透明感にかけ、ベタッとした色合いになる。
改良されたFujiⅨ extraも発売されたが、まだまだレジンの足元にも及んでいない。
そのため、比較的目立ちにくい臼歯部での使用が中心となる。
強度に劣る
レジンに比べると強度で劣る。
劣るといっても、セメントゆえにしなやかさに欠けるため。
鉄筋の入っていないコンクリートのようなもので、歯質という裏打ちがあれば咬合圧に耐えうる。
つまり、切端のようなところにくっつけるにはレジンの方が分がある、ということ。
チェアタイムが長い
窩洞に流して光をあてれば即硬化するレジンと比べると、練和して硬化を待つグラスアイオノマーは時間がかかる。
これが、限られた時間で点数をあげなくてはならない保険治療で、忌避される最大の要因。
適応
グラスアイオノマーセメントはレジンとどっちが優れているか、ではない。
それぞれに特徴があり、その特徴をうまく引き出すように組み合わせて治療するのが望ましい。
ヨーロッパなどでは、グラスアイオノマーセメントの表層をレジンコーティングする「EQUIAシステム」が普及している。
当院では、臼歯部では主にグラスアイオノマーセメント・フジナインを、前歯部などの審美性が要求されるところにはレジンを使用する。
小児などのう蝕感受性の高い患者には、可能な限りグラスアイオノマーセメントが望ましいと考えている。
当院で用いてるグラスアイオノマーセメント・FujiⅨ extra
即時充填材料 完