アナフィラキシー 免疫とアレルギー その7
アナフィラキシーの機序
アナフィラキシーはⅠ型アレルギーなので、通常IgEを介するが、IgEが関与しないものもある。
IgEが肥満細胞(マスト細胞)と結合した状態で、抗原が結合することで、ヒスタミンなどのケミカルメディエーターを放出する。
ケミカルメディエーターは細動脈の血管拡張・気管支末梢の収縮・血管から組織への体液の浸透性の増加をもたらす。
ところが、薬剤や血管造影剤で引き起こされるアナフィラキシーはIgEを介さずに直接肥満細胞を刺激することでおこる。
遅発性反応
アナフィラキシーは、最初の症状が出てから、数時間後~72時間後に再び発生することがある。
この二峰性の反応を、遅発性反応という。
そのため、アナフィラキシーは最初の反応が出た後、病院で経過をみる必要がある。
アナフィラキシーの対処法
特効薬・アドレナリン
何はともあれ、一刻も早いアドレナリンの投与である。
アドレナリンは、エピネフリン、ボスミンなどとも呼ばれる。
体内では副腎髄質から分泌されるホルモン。
心臓の収縮の促進・末梢血管の収縮・大血管や筋肉の血管の拡張・気管支拡張・血圧上昇などがある。
つまり、アナフィラキシーショックに拮抗する作用であり、急激な反応に対する唯一の特効薬といって良い。
これを、筋肉注射する。
静脈注射では、量によっては心停止する。
麻酔科医など慣れたドクターなら、減量投与する、これが一番早い。
皮下注射では、アドレナリンの末梢血管の収縮のため効果が出るのに30分以上かかり、間に合わない。
筋肉注射であれば、筋肉の血管が拡張するため、約10分で血中最高濃度に達する。
症状が続く場合は、追加投与する。
心停止に近い場合は、静脈投与。
アドレナリンの投与は遅発反応を有意に減らす効果もある。
その他の初期対応
血圧の低下に対応するため、仰向けにして足を高く保持する。
嘔吐がある場合は、顔を横にする。
舌根沈下で窒息しないようにする。
医療機関においては、バイタルを測定し、静脈ルートの確保・気道確保・酸素投与など。
その他の薬
抗ヒスタミン剤は、皮膚症状や浮腫などには効果があるが、呼吸器症状には無効。
補助的に用いる。
輸液は、血圧の維持のため有効である。
家庭および医院でのアドレナリン
本来はアドレナリンは劇薬指定で、医療機関で鍵のかかるところでの保管である。
しかしアナフィラキシーが発症すると、救急車の対応では間に合わない場合がある。
そのため、既往がある患者に自己注射薬であるエピペンが処方できるようになった。
値段が高いのと、静脈に直接入ってしまう場合があるのが欠点。
エピペンはハチに刺されたりして症状が出た場合などに、迅速に太ももに注射する。
当院でも、アドレナリン製剤の用意がある。
すでにシリンジにアドレナリンが充填された、プレフィルドシリンジタイプ。
これは、バックアクションといって、針を進めた位置で一回注射器を引き戻すことで、静脈に針が入っていないことを確認できる。
もし、針が静脈にあれば、薬液中に血液が逆流する。
家庭用に比べ、より安全にアドレナリンの投与が可能。
しかも、エピペンに比べ数十分の一以下の価格。
本数に余裕があり、追加投与も可能。
当院に用意されているアドレナリンのプレフィルドシリンジ
アナフィラキシー今後
アナフィラキシーは誰でも起こりうる疾患であり、身近なものである。
学校・職場など、救命救急講習にあわせて啓蒙が必要であると考える。
アナフィラキシー
免疫とアレルギー 完