金属アレルギー

金属アレルギーは、Ⅳ型アレルギーに属する細胞性免疫の疾患である。
しかしながら、その機序については長らく不明であった。
しかし一昨年、大阪大学大学院薬学研究科のグループが、体内での金属の動態と感作の新しいモデルを解明し、科学誌ネイチャーに掲載された。
その後他の機関による追試験と、感作にかかわるいくつかの実験結果が発表されている。
その結果を踏まえ、今回はⅣ型アレルギーの解説とは別に、特に金属アレルギーの機序についてまとめていく。

金属アレルギーの代表的疾患

接触性皮膚炎や扁平苔癬、掌蹠膿疱症などがある。
原因の金属の除去が治療であるが、原因を除去してもすぐに寛解が得られない場合が多い。
体内に取り込まれ、重積した金属の排出がすぐにはできないためである。
長い場合は2年以上を有する場合もあるし、除去の際に切削粉など大量の金属の暴露により一時的に悪化することさえある。

歯科領域でのアレルギーの原因金属

特に陽性率が高いのが、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、水銀など。
他にも銅・亜鉛・インジウム・スズなども口腔領域では高頻度に検出される。
注目すべき点として、銀歯の材料である金属がおしなべてアレルゲンとなっていること。

銀歯の組成は、銀(Ag)40~50%、パラジウム(Pd)20%、銅(Cu)15~20%、金(Au)12%。
他に亜鉛(Zn)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、スズ(Sn)など。

銀歯の材料・金銀パラジウム合金
金銀パラジウム合金

銀歯の材料の金銀パラジウム合金は、所詮代用金属。
開発当初では全くと言ってよいほどアレルギーに関する注意は払われていなかった。
金属アレルギーが問題になったのは、銀歯が用いられて数年以上たってから。
しかし、いまだに金銀パラジウム合金は保険診療で使われ続けている。
いくつかの先進国では使用が禁止されているほど。
金銀パラジウム合金については、詳しくはこちら

金属の同定には、一般的にパッチテストが主流。
金属イオンを染み込ませた小片を一週間皮膚に貼り、発赤等の変化を調べるものである。
ただし、パッチテストに使用している塩化パラジウムが反応が悪く正確に検出できないなどの問題もある。
他にもリンパ球幼若化テストなども。

体内での金属の動態

長らく、金属アレルギーは原因が金属イオンと考えられてきた。
しかし、金属アレルギーの発症には、イオンではなく、金属ナノ粒子が引き金になることがわかってきた。
金属イオン単体では金属アレルギーは発症せずに、体内で金属から溶け出した金属イオンが再結晶化してナノ粒子が自然発生し、それがアレルギーを発症させる。

金属イオンでは濃度勾配が発生しないが、ナノ粒子は所属リンパ節に高い移行性があり、そこで重積される。
そこでアジュバンド(免疫活性化分子)の存在下で、金属ナトリウムの感作が成立する。
アジュバンド(免疫活性化分子)に相当する体内でのイベントは、感染などによる炎症が考えられる。
炎症で活性化されたT細胞が、本来の炎症の原因ではなく、リンパ節に集積したナノ粒子を抗原と認識してしまうことでアレルギー応答を獲得してしまうのである。
これが金属アレルギーの機序である。

金属アレルギーの治療は、原因金属の同定と、除去。
アレルギーについては、ジャンクサイエンスの宝庫といえるくらい色々な民間療法がはびこっている。
くれぐれも、正しいエビデンスに基づいた治療を受けていただきたい。

続きます