近年、大阪市内で地下鉄に乗ると、ものすごい数の外国人観光客に出くわす。
いつの間にか日本は観光大国になっている。
黒門市場など昔の面影すらなくなってしまっている。
日本にお金を落としてくれるなら、まあ良いというところか。
今回は、今まで診てきた外国籍の患者の話。
すべて昔の職場での話である。
外国では、歯科治療はものすごく高額。
というか、日本が安すぎる。
日本で歯を治療するときにかかる費用は、先進国中ダントツで低価格。
先進国どころか、中国・韓国・フィリピン・タイといった国より安い。
カンボジア並みの治療費ですんでしまう。
先進国では歯の根っこ1本当たり10万円が相場、奥歯なら3本×10万+クラウンで40万くらいというところか。
だから予防が発達する。
日本で、悪くなったら治してもらえれば良い、というのは保険制度が生んだ悪しき思考回路。
安くても治療が良ければ最高だが、そんなうまい話などない。
保険治療は治療も代用品中心の前時代的なもので、数を診なくては経営が成り立たないため、当然中身はそれなりになる。
例をあげると、保険の義歯の作成手順を、歯学部の試験に書いたら間違いなくバツ。
保険義歯は作成手順を可能な限り切り詰めた、入れ歯のようなものでしかないわけだ。
これは、保険治療全般にいえること。
だから、総じて日本の標準的な歯科保険治療の予後は、海外に比べ圧倒的に悪い。
外国ではそれだけの治療費がかかるのだから、中身は当然、そしてカウンセリングがしっかりしている。
歯科治療はまずそこから入るといってよい。
ところが、日本での外国人の保険治療、儲けのほとんど出ない、半ばボランティアの治療で海外並みのカウンセリングを要求されるので大変なのだ。
以前、パナソニックのおひざ元の門真で西洋人技術者を診ることになった。
根掘り葉掘り細かく質問されるので、治療が回らず、大変なことになってしまったことがある。
とはいえ、きちんと説明すると、当たり前のように自費のセラミック治療を選択された。
韓国からの留学生をよく診るが、全員きちんと金歯で治してあって、さすがと思った。
お金かかったでしょ、と聞くと、そうなんですよ、親不孝ですねと言っていた学生がいた。
銀歯は日本でしか見られない代用合金、海外では安全性から禁止の国すらある。
フィリピン出身で、フィリピンパブの経営をされているおばあさん。
上顎の総義歯を作り替えたいという。
いくらかかるのか聞かれたので、だいたいの値段を伝えると、安いと言って大喜び。
フィリピンの方が医療費が高いのは知っていたが、直面すると複雑な気分になる。
ちなみに日本の歯医者での保険診療で、入れ歯は赤字部門の代表格。
中国からの出稼ぎ?の家族。
そこの小学生の息子が左下6番に大きなカリエスをつくってきた。
カリエスを除去し、充填しなくてはならないのだが、そんなに削るなだの、そこはそれぐらいだの注文がうるさい。
虫歯を治すのは我々の仕事だが、治療についてとやかく指示される筋合いではない。
恨みを買っても割に合わないので、適当に切り上げた。
その家族の保険証をもって、全くの別人が来たのは後日譚。
本人確認できません、とお帰りいただいた。
メキシコからの一家、アメリカのロサンゼルスの出稼ぎ経由で来日。
そこの家長はスキンヘッドの頭に大きな切り傷のある、ガチムチの、映画に出てくるボディーガードのようなラテン系。
ボディーガードでもしていれば救いがあるが、生活保護受給者。
来日してすぐ申請したという。
生活能力がなく、生活保護受給で生活を前提に来日する外国人は多い。
アメリカでの歯科治療費が高くて治せなかったため、ことごとく生活保護医療券で治療となった。
そりゃ医療費で国も傾きかけるわと思ったものだ。
現在も、あの民主党政権時代の制度を悪用して、中国人が日本の健康保険を利用した医療ツアーにやってきている。
そろそろ、外国人への保険制度を見直していただきたいものである。
いろんな人がいるが、共通して苦労したのが言葉の壁。
日常生活では支障ないレベルで話せても、病気のことなどになるとわかってもらえない単語が多い。
以前は、治療の説明用にA4用紙十数枚におよぶ英語マニュアルを用意していた。
先日、中国からの患者を診るにあったって、iphoneに翻訳アプリ(google翻訳)を入れてみた。
スマフォに向かってしゃべるだけで、翻訳してくれた。
昔と比べると、隔世の感がある。
続きます