味覚障害の原因は、味覚に関係する神経系のどこかの段階で異常が生じたことでおこる。
口腔乾燥はその最初の段階である、味物質が感覚器に運ばれる段階での障害である。
刺激によって神経は膜電位の変化により、電気的に情報が運ばれる。
これを伝導という。
具体的には、舌の前3分の2は顔面神経、後方3分の1は舌咽神経、それ以外の咽頭などは迷走神経を経由する。
まずはこの神経に刺激を与える段階、そして神経内での伝導段階、そして中枢、つまり脳で味と認識される段階により、味覚は成立する。
神経に刺激を与える段階での障害は、味蕾の機能低下や、萎縮ならびに数の減少などがある。
局所的な原因は、菌交代によるカンジダが多い。
菌交代のカンジダの治療は、抗生剤を中止、もしくは抗真菌薬で寛解する。
全身的な原因は、舌炎、薬剤の副作用、癌治療時の放射線障害、内分泌疾患などがある。
なかでも微量元素の欠乏が最近注目されている。
亜鉛の不足は、味蕾の生まれ変わりが正常におこなわれなくなるため、味覚障害の原因として近年注目を集めてきた。
薬剤を服用することで、薬と一緒に尿中に亜鉛が排出されてしまうことで起きる。
キレート作用といい、抗鬱剤、脳循環促進剤、降圧剤、抗腫瘍薬で散見される。
亜鉛はカニやするめなどの魚介類に多く含まれるので、上記の薬剤を服用している場合は積極的に摂取すべきだろう。
他にも、鉄欠乏性貧血で舌乳頭がなくなり、光沢を呈する平滑舌。
ビタミンB12の欠乏により、舌先に灼熱感と呼ばれる痛みをともなうハンター舌炎などがある。
神経内での伝達や、中枢での味覚の認識の段階での障害は厄介だ。
帯状疱疹で顔面神経支配領域にウイルスの再活性化がおこると、味覚障害がおこるが、これは一時的で、寛解とともに回復する。
問題は、腫瘍などにより、神経そのものや、中枢の知覚野が障害を受けている場合。
これは単に味覚障害というだけではない。
全身的な問題は、時として医科にまたがるのみならず、命にかかわる場合がある。
味覚は五感と呼ばれる、人間の感覚の一角をしめる。
それが障害された場合は、単にお口の中の問題だけでなく、全身疾患の一症状として露見している場合がある。
障害というレベルでなくとも、味覚の変化は全身からのサイン。
あれっと思ったら、感覚に強い医療機関を受診することをおすすめする。