鎮痛剤各論

今まで鎮痛剤の特徴を物質ごと特徴を書いた。
これではわかりにくいかと思うので、薬局で手に入るものを簡単にまとめていく。
参考にしていただきたい。

Nsaids

痛み物質プロスタグランジンの生産をする、酵素シクロオキシゲナーゼを阻害する薬品。
プロスタグランジンには、大まかに二つの作用がある。
ひとつは、痛みを含む炎症作用で、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)により誘導される。
もう一つは、胃腸の粘膜の保護など、生体の恒常性維持で、シクロオキシゲナーゼ1(COX-1)により誘導される。
COX-1、COX-2どちらによく作用するかで、薬の性質が変わってくる。

アセチルサリチル酸(アスピリン)

代表薬、バファリンA・ケロリン・アスピリンなど。
半分がやさしさでできているというあの薬。
ちなみに私の妻のやさしさは、鳩サブレの鳩の含有率以下である。

アセチルサリチル酸はCOX-1、COX-2を共に不可逆的に阻害する。
抗炎症作用は、強い。

アスピリンは、胃腸の粘膜にかかわるプロスタグランジンの産生を減らしてしまう欠点がある。
そこで、各メーカーは制酸剤などを加えて副作用を減らしたものが多い。
とはいえ、消化器潰瘍のある患者には注意が必要。
また、アラキドン酸からプロスタグランジンの生産が減る代わりに、ロイトコリエンの生産が増えるため、喘息には禁忌。
インフルエンザの発熱で使用する場合、15歳以下ではインフルエンザ脳症のリスクがある。

ジクロフェナクナトリウム

代表薬はボルタレン。
COX-2を選択的に阻害する能力が高く、非常に高い抗炎症作用を持つ。
そのため、痛み止めとしての性能も頭ひとつ抜け出ている。
注意すべき点はアスピリンに準ずる。

ロキソプロフェンナトリウム

代表薬はロキソニン。
ロキソと名の付く薬品は、大概これである。
バランスがとれており、消炎鎮痛剤の中で最も標準的に使われる。
COX-2選択的阻害性はジクロフェナクに比べるとやや劣るが、それに次ぐ抗炎症作用を持つ。

この薬の特徴は、プロドラッグであること。
体内に入るまでは、薬効を持たず、肝臓で変化を受けて初めて薬となる。
そのため、胃腸障害が少ない。
それでも、長期服用では高頻度で、潰瘍などの障害を誘発する。
半面、肝臓障害があると、薬剤が速やかに変化を受けれず、効果が弱くなる。

注意すべき点は、アスピリンに準ずる。

イブプロフェン

代表薬はエスタックイブなど。
COX-2選択性は割と低い部類に入り、Nsaidsのなかでは比較的穏やかな作用を示す。
常用量では鎮痛作用のみで、抗炎症作用はほとんどない。
Nsaidsの中では最も胃腸障害が弱い。

その穏やかさから、小児用の製薬も発売されている。
ただし、抗血小板薬服用の患者は要注意。
抗血小板薬の作用を減弱してしまう。
イブプロフェン自体にも、抗血小板作用があり、競合阻害をおこしてしまうためである。

アセトアミノフェン

代表薬はカロナール、小児用の熱冷ましは大概これ。
抗炎症作用はなし、解熱鎮痛に特化している。
小児や妊婦、授乳中など、安全面が絡むシチュエーションではほぼこれが第一選択となる。

解熱には割と低い用量で効果があるのだが、鎮痛には用量不足で効果が薄い場合がある。
そのため、医療機関では最大投与量が改められたが、販売医薬品では分量が少ないため鎮痛という面では弱い。

副作用の少ないアセトアミノフェンであるが、大量服用による肝臓障害がある。
有効血中濃度の10倍程度の高濃度に肝臓がさらされると、60%が高度の肝障害をおこす。
そのため、小児用のシロップ剤の大量誤飲などには、注意が必要。

安全性の高いアセトアミノフェン
アセトアミノフェンのカロナール

総論

通常我々が、服用する鎮痛剤は症状によってうまい使い分けが重要。
安全面だけではなく、症状を適切に抑えることとのバランスを重視してほしい。
薬は体に悪いからと、痛みを我慢するのは、余計病状を悪化させる場合もある。

今回まとめたものは、頭痛や歯痛など。
腹痛はまた別なので、これらの鎮痛剤は無効。

うまく鎮痛剤を使用して、できるだけ苦痛のない日常をすごすことをおすすめする。