高血圧の治療

高血圧の合併症は、様々な障害をもたらす。
その障害も患者に重篤な症状をきたすことが多いだけに、その治療は国民の課題といってよい。
何せ、日本の高血圧症の患者は4000万人にものぼるのである。
高齢者の有病率は、3分の2。
もはや国民病といってよい。
その治療法について、解説する。

高血圧治療は2段階

高血圧の原因は、遺伝的なものと生活習慣などが絡んだ複合的なもの。
それゆえ、まず血圧や他の疾患を加味してリスク分類がおこなわれる。
低リスク群、ならびに中リスク群においては、まずは生活習慣の修正がおこなわれる。
それでも改善がみられなかった場合、投薬による治療がおこなわれる。
むろん、高リスク群は即座の投薬がおこなわれるが、生活習慣を見直すことには変わりはない。

生活習慣の修正

ミネラルバランスの改善

重要となるのは、食塩制限。
ナトリウムの浸透圧が、血圧にかかわる。
塩っ気をとるとのどが渇いて、水を多く飲み、血管中の水分量が増える結果、血圧は上昇する。
細胞に水が入らないのは、細胞内の浸透圧を一定に保とうとする仕組みのためだ。(細胞が破裂しないよう)
日本人の食塩摂取量は11gと、目標基準値の6gを大きく上回っている。

ナトリウムの代謝には、他のミネラルもかかわる。
ナトリウムイオンが体内でカリウムなどのイオンと対になっており、カリウムが増えると、ナトリウムは減る。
カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制し、体外への排出を促すため。
つまり、野菜などに多く含まれるカリウムなどが体内に取り込まれると、ナトリウムが減らされ血圧が下がる。

肥満と運動

肥満は万病の元。
それは高血圧にとっても変わらない。
肥満の傾向がある人は、食事の量が多いことがほとんど。
つまり食事の量の増加に伴い、塩分摂取量も増えているため高血圧のリスクも上昇している。

また、食事の増加に伴い、インシュリンの分泌が活性化される。
インシュリンは、腎臓でのナトリウムの再吸収を促進する。
加えて過剰に分泌されたインシュリンは、拮抗するカテコラミンの分泌を促し、末梢血管の収縮をきたして血圧が上昇する。

対極にあるのが、運動。
運動でも、重量挙げのようなものでなく、軽い負荷の有酸素運動。
運動により汗をかくことで体液の貯蔵量が減少し、内圧が下がる。
また、運動により血糖を消費することで、インシュリンの効きが良くなり、分泌量が低下する。
適度な運動は、血圧低下に大きく貢献してくれる。

嗜好品の制限

アルコールは少量であれば問題はない。
しかし大量の飲酒習慣があると、飲酒時に末梢血管の拡張による血圧低下をきたす。
その反作用で通常時、高血圧に傾いてしまう。

喫煙は言わずもがな。
動脈硬化を促進し、高血圧のみならず、様々な悪影響を与える。

薬による治療

生活習慣の修正をおこなったにもかかわらず、改善が思わしくない場合は薬による治療となる。
ハイリスク群は即座の服薬、中リスク群は1カ月の生活習慣改善期間後、低リスク群は3か月の改善期間後、それぞれ効果が認められない場合、降圧薬の服薬開始となる。

降圧薬の作用機序はいろいろ。
現在では昇圧のメカニズムの様々なところに作用する薬があり、高血圧の程度と患者の健康状態に応じ処方される。
健康状態にもよるが、降圧薬は一生の付き合いとなる場合も多い。

代表的なCa拮抗型降圧薬・アムロジピン
アムロジピン

続きます