中国製を使う歯科医院がある理由はその価格。
当院にも、中国の技工物を扱う業者からのダイレクトメールが良く届く。
その技工代金は、国内の技工所の約3分の1程度。
印象を取って石膏を流して模型を作成し、それを業者に渡せば、1週間程度で航空便で送られてくる。
患者にはわかりようがない。

背景には、不当に低い歯科保険点数がある。
歯科用として使われている金属は、厚生労働省令によって規定されている。
保険点数の見直しは2年に一度だが、金属は価格変動があるため、半年に一度随時改定が行われる。
しかし、この10年以上合金の価格は上がり続けている。
ギリギリの価格を設定するのは、膨れ上がる医療費を抑えるためだ。

実は銀歯の価格の大部分は、金属代。
代用金属ではあるものの、金銀パラジウムなど高価な金属が使われている。
この半年の価格は、当院で使用しているGC社のキャストウェルで、30グラム39000円から44000円ほど。
厚生労働省の決める価格では、赤字ラインをこえてしまう時期もあった。
治療すればするほど赤字。
患者の少ない歯科医院では、本当に苦しいだろう。
これを黒字にするには、技工代を下げるしかない。

そのため、中国に技工を託す歯科医院は増加の一方だ。
実際、ものすごい量の歯科補綴物が中国からなだれ込んでいる。
しかし国内の技工所だから大丈夫かというと、そうではない。
海外の下請けに外注し、仕上げだけ国内で行い国産を名乗る技工所もある。
何だか海産物の産地偽装のようなことが平気で行われているのだ。
ならば院内技工だから間違いないかというとそうでもなくて、当院近くの某インプラントセンターでは、技工所との取引でないのをいいことに、定められた金属を使用せずに利ザヤを稼いでいる。
完全にモラルの問題。

私は半ば意地になって品質を維持している。
だからこそ、このような内容をブログにあげている。
ただでさえ、厚生労働省の定める銀歯などの金属は代用金属に過ぎず、補綴学会等のもとめる所定の性能からは程遠い。
当院では取引のある、技工士さんと相談して、操作性に優れた高めの金属を使い、完全国内技工。
金属代が高騰すると、何をやっているのだろうかと思うことがあるけれど。

海外からの歯科技工物 完