下顎窩につきあたってしまっている下顎頭。
これを引き戻して、つきあたる僅か手前の空間に位置させなければならない。

これは、下顎全体を逆方向に回転させ、安定させるということ。
下顎頭がつきこむ手前で、ロックしなくてはならない。

今回のように入れ歯の場合は、入れ歯自体がロックにつかうつっかい棒の役割となる。
しかし、入れ歯は粘膜に力を分散させ支持を得る装置。
つまりは、強大な顎の回転力を粘膜で負担しなくてはならない。
そのため、下顎の偏位の修正は入れ歯の痛みなどのトラブルを避けれず、長い期間調整で苦労を強いられる。

まずは木片を痛みのある側の臼歯部でかませる。
これで20分程度がんばってもらう。
補綴に問題があり、顎の偏位が引き起こされていた場合には、偏位や疼痛の低減がみられる。

中心位はゴシックアーチ描記などでも求められるが、このような場合、まずは関節の状態を把握し、症状の緩和をはかる。
何かをかんでもらって、仮想的な咬合状態を作り出すほうが迅速な診断が得られる。

痛みのある側の入れ歯の咬合面に、即時重合レジンを盛り上げ、低位となっている部分をかさ上げする。
上げ量は、患者によって異なる。
目標量の何分の一の時もあれば、逆に目標量を超えるだろうなというときも。
こればかりは、カンのようなもので、これといった基準はない。
強いて言うなら、患者の感覚と粘膜の許容量というところか。
どちらにしてもゴールは同じ値。

何日かのちに、患者が来院。
耳の痛みが消失、不快感や肩こりも気づけば消えていたとのこと。
ただ、痛みのあった側の粘膜面がに痛みがあるという。
これは、予想の範囲内。
診察すると、狙い通り偏位が消失している。
あとは、この顎位を新しい補綴物に落とし込む。

しかし、前方少数歯のみ残存の場合はなかなか苦労する。
前方歯のみでで顎位をあわせて、咬合床に情報を移すのは、技術が必要。
顎位を手で誘導していくため。
下顎の総義歯なら、コピーデンチャーで印象と咬合採得ができるため意外と簡単。

続きます